ジョセフ・クラフト 特別レポート

ブレキジットの最終着地点

掲載日:2019年01月16日

この件に関して語りつくされているのと、今後の展開は誰にも読めないことからあまり多くは語るつもりは無い。結論から言うと個人的に最終着地点は残存と考えている。3月28日期限の延長、不信任案(否決予想)、合意案の再交渉、メイ辞職など様々な展開が予想されるが、最終的には三つの選択肢しかない: ①メイ首相の離脱案、②合意無き離脱そして③2回目の国民投票(残存)。①に関して昨晩の歴史的大敗(432対202)によって再交渉の道は極めて難しくなった。②に関して既に議会で合意無き離脱を避けるコンセンサスが出来上がっている。そうなると行き着くところは2回目の国民投票。無論、再度離脱の結果が出て①か②に戻る可能性はある。しかし、2回目の国民投票が無いと進展が見えにくい。昨晩のCNNネット世論調査にもあったように80%近くが残存を希望(注意:この世論調査はネット(若い層)での問いで、欧州本土も含むため実際はより均衡するも、残存に英世論は傾いていると考える)。

ところが、面白い話としてトゥスクEU大統領の側近と話した金融筋の話によると、今まで交渉の余地は無い、期限の延長もしないと強気の立場を取って来たEUがここに来て態度を軟化させているとのこと。実は、EU首脳部のホンネは(イギリスの)残存を懸念しているとのこと。一見残存はEUの勝利に見えるが、実は離脱問題が燻るだけで3年あるいは5年後に(離脱世論が)再浮上するリスクを指摘。スペインやイタリア問題を抱える中で、イギリスの爆弾を将来に持ち越したくないとのこと。とは言え、ハード・ブレキジットは影響が大き過ぎる。従ってソフト・ブレキジットの道を残すためにもう少し時間を与えても良いのではとの議論が水面下にあるようだ。正直なところ、EUは飽き飽きしている。あるEU高官曰く、「離婚協議を2年もやって、今更ヨリを戻したいと言われても愛情なんて消えているよ・・・。」とのこと。

米政府閉鎖解除は何時になるのか?

結論から言うと早ければ今週の金曜日(18日)、遅くとも来週の金曜日(25日)~週末ごろと考えている。2月に政府閉鎖が続けば、インフラ機能不全のリスクそしてトランプ支持率の大幅下落が予想される。それ以上にトランプにとって問題は、これまで一枚岩だった共和党の結束が崩れ、求心力を失いかねない。では何故18日と25日がポイントなのか?

ポイント① 雇用統計: 18日(金)を過ぎると2月1日に発表される1月雇用統計に休職している約38万人の政府職員が失業者として反映されると思われる(閉鎖機関の詳細に関して下記表参照)。一時的とは言え、これまで好景気を自慢して来たトランプにとってはマイナス、リベラル系メディアからの批判を助長しかねない。実質経済への悪影響と共にネガティブ・データが更なる株価下落に繋がるリスクが高まる。とは言うものの、ここまで公約・プライドを頑なに維持してきただけに雇用統計ぐらいでは簡単に引き下がれないことも承知。18日はあくまで一つの考慮材料で本当の山はポイント②と思われる。

ポイント② (3回目の)給与日: 政府職員含め、アメリカの一般労働者の給与は2週間ごとに支払われる。生活設計の緩い国民性のため給料1ヶ月分を支給すると月前半で使いきってしまうため、2週間制になっている。政府閉鎖後(12月21日)、最初の給料日が12月28日。1回目は問題ない。次の給与日が1月11日で、いよいよ生活が圧迫され始めている。その証として低下基調ながら比較的安定だったトランプの支持率が11日からガクンと下がり始めた。既に不支持率は11日以前が反発している。来週25日(金)は閉鎖後3回目の給与日で、これは耐えがたい水準と言えよう。これを過ぎるとトランプの支持率は大きく下落、遠いとは言え、2020年の大統領選への影響も否定できない。一番危惧されるのが交通機関などインフラへの影響である。既に一部で問題化しているが、25日を境に出勤拒否が増えて空港やハイウェイなどの閉鎖、最悪の場合は事故などに繋がる恐れがある。

より本質的な問題として共和党内でのトランプの求心力が失われかねない。国民は今回の政府閉鎖の責任をトランプに位置付けており、共和党への風当たりは厳しくなる一方。トランプの前に共和党上院議員の我慢の限界が近づいている。以前にシリア撤退最大の問題は軍事戦略以上に共和党員のトランプ離れと指摘させていただいた。そこに政府閉鎖が加わって共和党結束の岩盤に亀裂が入り始めている。共和党の結束が崩れることは弾劾リスクを高まることになり、そこまで行かずとも政権運営に大きな影響を及ぼしかねない。

ブレキジットの最終着地点は?米政府閉鎖解除は何時になるのか?

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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