ジョセフ・クラフト 特別レポート

トランプ政権: 終わりの始まり・・・?

掲載日:2018年12月25日

今朝方、「トランプ政権、唯一の大人」と言われるマティス国防長官が辞任したことはご存知と思う。小生はモラー捜査(ロシア疑惑)や数々のスキャンダルなどよりもマティス長官の辞任が、後にトランプ政権の崩壊に繋がりかねない重大な問題と考えている。一言で言うと弾劾リスクを高めかねない事項である。

マティス長官の退任はかねてから噂があり、これ自体は驚く問題では無い。重要なのが辞め方である。今回の辞任が何故重要かと言うと、今後共和党議員からの反発・反乱を触発させかねないからである。モラー捜査の進展あるいはポルノ女優への口止め料などのニュースは逆に支持基盤を筆頭に共和党を結束させるもの。従って上院で弾劾発議が可決するなど考えられない。トランプの言動・行動を容認していない議員でも沈黙を守り、トランプの政策を支持して来た。ところが、マティス長官はトランプに異議を唱え、辞表を公開したことで、共和党内で(トランプを怖がらずに)モノ申すべきではないかと波紋を呼んでいる(辞表の和訳は下記参照)。マティスに触発されてか、トランプ批判を抑えて来た共和党議員から釘を刺すコメントが次々に出始めている(下記参照)。党内からの抵抗・造反は民主党の下院脱却より深刻であり、政策運営どころか最悪弾劾発議に同情する動きに発展しかねない。。

マティス辞任後の著名共和党議員コメント

マッコネル上院院内総務:「特に不穏な事態である。」

ルビオ・フロリダ州上院議員:「この辞表は、我々が深刻な過ちの道に入り、自国を脅威にさらし、同盟国を気づ付け、そして敵対国を増強させてることを指摘している。」

サッス・ネブラスカ上院議員:「アメリカにとってとても残念な一日だ。マティス長官はトランプ大統領が聞くべき助言をしていたからだ。」

キンジンガ―・イリノイ州会員議員(元軍人):「健全なアドバイスを無視すればこうなる。私が知っている軍関係者は誰も(シリア撤退を)支持していない。」

ケイシックオハイオ州州知事:「こうした国内外の混乱はアメリカを脅威にさらしており、直ちに止めなければいけない。」

マティス長官辞任はシリア撤退だけが理由では無く、前々から積み重なった懸案事項が挙げられる。先ず、マティス長官が進めていた軍改革の一貫でLGBT(同性愛者)を入隊させる方針をトランプが就任後に撤回。NATOの枠組みを軽視、同盟国と度々衝突。イラン核合意から離脱そして去年の7月にアフガニスタン造兵をめぐり衝突した経緯がある。しかしシリアに関しては相談をほとんどせずに国内政治目的のため勝手に発表したこたはさすがに穏健なマティスも許せなかった。政治目的とは中間選挙の下院敗北、元個人弁護士有罪判決、フリン元NSC院長の自供そして株価暴落など悪いニュースが続く中で、成果・勝利をアピールしたいトランプはISIS撲滅宣言を決断。実に幼稚で自己中心的な理由である。

シリア撤退そして噂されているアフガン撤退は共和党からの支持は薄い。むしろ民主党・リベラル層に評価されるもの。先ず、ペンタゴンは当然反対。公的に言えないかもしれないが、ボルトンNSC委員長及びポンぺオ国務長官も反対の立場。更にトランプ支持層に人気が高いアメリカ保守系トークショーのホストであるラッシュ・リンボーも反対を表明。FOXニュースは批判はしないまでも慎重な立場を取っている。つまり政治ポイント獲得のための賭けが裏目に出ているようである。

ここで最大の関心事はトランプがシリア撤退の過ちに気付き、軌道修正を図れるか、それともこのまま暴走路線を辿るのか?軍や安全保障閣僚のアドバイスを無視して(例えばアフガン撤退など)国家安全を犯す決断を続けると党との確執を広げ、やがて弾劾に偏りかねない事態が想定される(まだその確率は低い)。少なくとも共和党議員の動揺・反発を見て、民主党から政策面(インフラや麻薬問題)での協力は期待できない。株価が暴落する中で、米政権存続が危ぶまれるような状況に発展してしまうと更なる深刻な金融市場情勢を招き兼ねないのでとても危惧している。

マティス国防長官の辞表

親愛なる大統領閣下

私は第26代の国防長官として国防総省の職員らとともに米国の国民や理念を守る職務を担当してきました。

2年間で国家防衛戦略に盛り込んだいくつかの重要な目標に向けた進展があったことを誇りに思います。たとえば、国防総省の財政基盤を整えたり、軍の機動力や攻撃力を高めたり、高いパフォーマンスを実現するために省の働き方を変えたりしたことがあります。米軍は紛争で勝利し、世界での強い影響力を維持する能力を提供しています。

国家としての強みは同盟やパートナーシップという唯一無二で包括的な概念と緊密に結びついていると私は固く信じています。米国は自由な世界において不可欠な国でありますが、同盟国との強い同盟を維持し敬意を示さなければ、国益を守ったり、国益を追求したりすることはできません。あなたと同じように私も米軍は世界の警察ではないと言ってきました。その代わりに、同盟国に効果的な指導力を示すことを含めて(同盟国の)共同防衛に向けて、米国が持つ全ての手段を提供する必要があります。民主主義を重視する北大西洋条約機構(NATO)29カ国は2001年9月の米同時多発テロ後に我々に寄りそって戦うと約束してくれて(同盟の)強みを証明しました。(過激派組織の)イスラム国の壊滅に向けた連合軍ももう一つの同盟の証しです。

同様に戦略的利益が我々の利益と衝突することが増えた国に対しては、我々のアプローチを断固かつ明確なものとしておく必要があります。中国やロシアが自国の利益を追求するために経済・外交・安全保障に関する他国の決断を否定し、権威主義的な政治モデルと整合的な世界をつくりだしたいと望んでいるのは明らかです。だからこそ、我々は共同防衛に向けて、あらゆる手段を尽くさなければならないのです。

同盟国に敬意を払い、悪意に満ちた者や戦略的な競争相手に注意を払うべきだという私の考えは、こうした問題に取り組んだ私の40年以上(の経験)に基づき、培われたものです。我々の安全保障や繁栄、価値観に最も資する国際秩序を推進するためにできることは全てやるべきです。我々は同盟という結束によって強くなるのです。

あなたは、これらの点について、あなたの考えにより近い人物を国防長官に据える権利があります。だから私は身を引く時だと考えています。私の任期の最終日は2019年2月28日とします。この日付にしたのは、次期議会の公聴会や2月のNATO国防相会合で、国防総省の利益を適切に説明し守っていくだけでなく、後任が指名され承認されるために十分な時間を確保するためです。さらに来年9月の米統合参謀本部議長の交代に先立って新しい国防長官に移行し、省内の安定を確かなものにするためでもあります。

私は215万人の軍人や73万2079人の国防総省の文民が職務に集中し、米国民を守るための不眠不休のミッションを遂行できるよう円滑な移行に最善をつくすことを誓います。

この国や軍人たちに仕えることができて大変感謝しています。

続編

かねてからFOMCの利上げに強い不満を抱いていたトランプがパウエル議長の解任を検討しているとの報道があった。報道を見た瞬間、「トランプはFRB議長を解任できないことも知らないのか?」と一瞬笑ったが、ちょっと待てよとFederal Reserve Act(連邦準備法)を確認。恥ずかしながら、解任出来ると記載されている(下記黄色ハイライト参照)。連邦準備法のSection 10.2に「...unless removed for cause by the President.」と14年任期だが正当な理由を持って解任出来ると明記。ただし、正当な理由が何なのか具体的に明記されていない。そして小生が知る限り前例も無い。

本来であればありえない話と無視するものだが、トランプだけに可能性は否定できない。その可能性が本格化するようなことになれば、FEDは政策金利を据え置くどころか、(大幅な)利下げ転じることが予想される。それはそれで多大な混乱を招き、更には(100円以上の?)円高相場に突入しかねない可能性も秘めている・・・。これこそ究極の為替操作ではないか?

2. Members ineligible to serve member banks; term of office; chairman and vice chairman

The members of the Board shall be ineligible during the time they are in office and for two years thereafter to hold any office, position, or employment in any member bank, except that this restriction shall not apply to a member who has served the full term for which he was appointed. Upon the expiration of the term of any appointive member of the Federal Reserve Board in office on the date of enactment of the Banking Act of 1935, the President shall fix the term of the successor to such member at not to exceed fourteen years, as designated by the President at the time of nomination, but in such manner as to provide for the expiration of the term of not more than one member in any two-year period, and thereafter each member shall hold office for a term of fourteen years from the expiration of the term of his predecessor, unless sooner removed for cause by the President. Of the persons thus appointed, 1 shall be designated by the President, by and with the advice and consent of the Senate, to serve as Chairman of the Board for a term of 4 years, and 2 shall be designated by the President, by and with the advice and consent of the Senate, to serve as Vice Chairmen of the Board, each for a term of 4 years, 1 of whom shall serve in the absence of the Chairman, as provided in the fourth undesignated paragraph of this section, and 1 of whom shall be designated Vice Chairman for Supervision. The Vice Chairman for Supervision shall develop policy recommendations for the Board regarding supervision and regulation of depository institution holding companies and other financial firms supervised by the Board, and shall oversee the supervision and regulation of such firms. The chairman of the Board, subject to its supervision, shall be its active executive officer. Each member of the Board shall within fifteen days after notice of appointment make and subscribe to the oath of office. Upon the expiration of their terms of office, members of the Board shall continue to serve until their successors are appointed and have qualified. Any person appointed as a member of the Board after the date of enactment of the Banking Act of 1935 shall not be eligible for reappointment as such member after he shall have served a full term of fourteen years.

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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