米中貿易交渉に好転の兆し・・・(?)

アメリカの交渉スタンスに変化


11月6日にシンガポールで開催された「Bloomberg New Economy Forum」に王岐山中国副主席が演説。副主席が民間の討論会に参加するのは極めて異例と言えよう。王副主席は演説の中で、「中国は貿易問題の解決に向けて米国と協議を行う用意がある」とトランプ政権へシグナルを発した。同フォーラムにはMichael Bloomberg、Henry KissingerそしてHank Paulsonらも出席。王岐山のフォーラム出席の目的は主にポールソン氏と個人的に接触するためだったと推測する。会場で二人は会い、王氏はポールソン氏に「我々はG20で(貿易)サプライズを用意している」と伝言、ムニューシン財務長官に伝えられたようである。

小生は以前から米中貿易交渉の進展には悲観的(11月15日レポート「米中貿易交渉に期待が持てない五つのポイント」)であった。その大きな要因の一つにライトハイザーUSTR代表が交渉プロセスに加わっていないからである。あるUSTR高官から、ライトハイザーが直接関与していない貿易協議はトランプの支持が担保されておらず、真の交渉と見なすべきでないと直接聞いたことがある。そして今年5月の二の舞を踏むかのように再びムニューシン長官主導の米中協議が始まった。

ところが先日、ワシントン及びニュー・ヨークのコンタクトから別々に「ライトハイザーが交渉プロセスに入った」と聞いた。ライトハイザーの参加が本当であれば、トランプとして真剣に貿易交渉に臨む姿勢を意味し、一定の進展期待が持てると考える。それだけでなく、中国側は王岐山も正式加わっているようだとのこと。劉鶴副首相だけではなく、むしろ中国政府のトップが勢ぞろいで全力体制を示しているのではないか? 現段階ではライトハイザーが直接中国側と接しているのではないが、Terrence McCartin中国担当通商代表補佐官が主に対応しているようで、その他Jamieson Greer通商首席補佐官も補充しているとのこと。これらの名を聞くと更に真実味を帯びてくる。


トランプの心境変化


最近トランプに二つの心境の変化が見られると思う。ホワイトハウスに精通する米投資家も同感しており、それは: ①景気の先行き不安と②欧州への不満再熱。いずれも2020年の大統領選と大きく関わる問題。

経済不安 ~ 一番の要因は直近の株価下落(10月3日から9%下落)。アメリカ国民の6割が株式投資に関わっており、特に年末時期の下落は消費への影響が危惧される。中間選挙の大詰めで中国への態度軟化を見せたり、所得税減税をほのめかせたりと株式を意識したものと推測される。更に現地からクドローNEC委員長や商務省がトランプに貿易関税による景気減速リスクをしきりに主張しているらしい。景気減速リスクの主張内容とは: ①2019年半ばから減税措置による刺激効果が落ち始める、②2018年9月24日までの関税は中国への打撃が主だが、これ以上はアメリカにも悪影響が及ぶ(下記票参照)、そして③FRBはあと3回~5回の利上げを行うこと。つまりこのままで行けば、2019年半ばから米景気の下降が本格化し、2020年の大統領選に響くということをトランプ大統領が意識し始めている可能性が挙げられる。2019年1月から2月にかけて数多くの民主党大統領候補の出馬表明が予想されており、いよいよ2020年へと関心が移る中、トランプ大統領の命綱は正しく好景気しかない。


出所:米国通商代表部(USTR)

欧州への不満 ~ もう一つ心境の変化として、トランプ大統領はフランスで行われた第一次世界大戦終戦記念式典以降、欧州への怒り・不満を募らせていて、逆に中国への敵意が幾分薄らいでいるとのこと。現地ではフランスのマクロン大統領から表立って批判を受け、メルケル独首相及び欧州各国首脳らとの溝が浮き彫りとなった。そのためか終始不機嫌で、米兵墓地の戦没者追悼式をドタキャンしたことが国内の批判を受ける始末。そこにユンカー欧州委員会委員長との貿易協議以降主だった進展はなく、加えてNATOの費用負担問題などもあり、側近らに「EUへの自動車課税を課せろ!」と八つ当たりしているらしい。 EUに業を煮やしたトランプ政権は来週にも、BMW、DaimlerそしてVolkswagon3社のCEOをホワイトハウスに招いて打開策を迫るようである。注目されるのはEUは元よりドイツ政府も招待を受けていないらしい。直近の米欧関係は日本にとっても極めて注視すべき点、トランプが突発的にEUに対して自動車関税を課せるような事態となれば(日米貿易声明があっても)何らかのとばっちりが日本にも及ぶ可能性は否定できない。


今後予想されるシナリオ


トランプ大統領が対中で姿勢を軟化していると言うより、景気動向を幾分ながら警戒して余儀なく軟化していると言った方が正しいかもしれない。中国とは物品での合意を模索するものの(これは日本とも同じ)、知的所有権、ハイテク技術移転問題、金融改革(通貨)そして安全保障面などで引き続き強硬姿勢を押すものと思われる。

G20では主だった貿易合意に至る可能性は低い。おそらく今後の貿易交渉に入る合意文で止まると推測される。ワシントン筋の話によれば、とりあえず60~90日間の関税停戦期間を設けて、財務省ではなくUSTR(ライトハイザー)を表立って交渉に入れることをホワイトハウス内で議論されているとのこと。例えば、1月1日に10%から25%への引上げが予定されている2,000憶ドルの関税(上記票参照)を一時棚上げにしてその間により具体的な協議を持つこと。ただし、それには中国から一定の譲歩が必要とのこと。それは単発的でも良いから米国品の購入あるいは農産物への課税撤廃など。このことを中国と当局(王岐山)がシンガポールでポールソンに伝達した「サプライズ」なのであろうか?そうだとしたら、そうだとしたら、米政権としては「サプライズ」では無く「前提条件」という見方をしていると思われる。

まあ、トランプ大統領のことだから裏切られることを承知の上で、米中貿易戦争での一定の進展を期待する・・・。

講師プロフィール

ジョセフ・クラフト氏 SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

最短5分口座開設はこちら無料


オプションFXの口座開設からご入金までの流れ




ご注意事項

お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。 また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートに表示されている事項は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。



【SBI FXTRADE及び積立FX(店頭外国為替証拠金取引)】
店頭外国為替証拠金取引は、取引金額(約定代金)に対して少額の取引必要証拠金をもとに取引を行うため、取引必要証拠金に比べ多額の利益を得ることもありますが、その一方で短期間のうちに多額の損失を被る可能性があります。外貨での出金はできません。経済指標の結果によっては価格が急激に変動し、思わぬ損失が生ずるおそれがあります。また、その損失の額が預託した証拠金の額を上回ることもあります。取引価格、スワップポイント等は提供するサービスによって異なり、市場・金利情勢の変化等により変動しますので、将来にわたり保証されるものではありません。取引価格は、買値と売値に差があります。決済方法は反対売買による差金決済となります。店頭外国為替証拠金取引にあたっては必要な証拠金の額は提供するサービス及び取引通貨ペアごとに異なり、取引価格に応じた取引額に対して一定の証拠金率(「SBI FXTRADE」個人のお客様:4%(レバレッジ25倍)*、法人のお客様:一般社団法人金融先物取引業協会が毎週発表する通貨ペアごとの為替リスク想定比率**(通貨ペアごとにそれぞれレバレッジが異なります)、「積立FX」個人および法人のお客様:100%(レバレッジ1倍)、50%(レバレッジ2倍)、33.334%(レバレッジ3倍))の証拠金が必要となります。
*2018年9月8日のメンテナンス終了後以降、トルコリラ/円につきましては、証拠金率が5%(レバレッジ20倍)に変更となっております。
**為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。
【オプションFX(店頭通貨オプション取引)】
店頭通貨オプション取引は店頭外国為替証拠金取引の通貨を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。当社が提示するオプションの取引価格は、買値と売値に差があります。当社の提供する店頭通貨オプション取引の決済方法は反対売買による清算となり、また、NDO(ノンデリバラブル・オプション)であるため権利行使日に権利行使価格と実勢価格による反対売買を行います。
【共通】
全サービスを通して原則、口座開設・維持費および取引手数料は無料です。ただし、当社が提供するその他の付随サービスをご利用いただく場合は、この限りではありません。また、元本及び利益が保証されるものではありません。決済方法は反対売買による差金決済又は清算となります。お取引を始めるに際しては、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただき、ご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。

商号等:SBI FXトレード株式会社(金融商品取引業者)
登録番号:関東財務局長(金商)第2635号
加入協会:一般社団法人 金融先物取引業協会(会員番号1588)

© SBI FXTRADE Co., Ltd. ALL Rights Reserved.