ジョセフ・クラフト 特別レポート

ジョセフ・クラフトによる米中間選挙結果分析

掲載日:2018年11月20日

中間選挙は事前予想通り、共和党が上院多数派を堅持、そして民主党が下院多数派を奪回した。今回の選挙結果は両党の面目が立った形となったが、客観的に見て軍配をトランプに上げざるを得ない。いや、2020年大統領選を見据えると共和党の大勝利と言っても過言ではない。日本メディアの多くはトランプの敗北を大々的に報道しているが、これは「反トランプ」でリベラル派のCNNやワシントン・ポストの報道をうのみにしているだけで僭越ながらに実態を良く見てないと個人的に考える。

先ず、上院で共和党は4議席伸ばし、大勝利である。2016年以前の議席数を上回り、トランプの影響力は益々強まる。下院では民主党女性議員の目覚ましい活躍はあったものの、期待されたほどのブルーウェーブ(青い波)は見られなかった。その最大の要因はオバマ前大統領を遊説に引っ張り出さなければならいほど、リーダーシップの欠如と言えよう。2020年の大統領選に向けて共和党はトランプの下で結集、戦略が定まったのに対して、民主党は今後の戦略・体制基盤の弱さを露呈してしまった。

まだ選挙結果が全て明らかになってないが、個人的に感じたポイントをいくつか紹介したい。

ポイント①: トランプの党内権力増強、2020年に向けて共和党からトランプ党へ・・・

上院で4議席(Indiana、Missouri、North DakotaとFlorida)伸ばしたことは大勝利である。先ず、インディアナ(3回)、ミズーリ(3回)、そしてフロリダ(4回)はトランプが積極的に遊説を行い、勝因は彼の功績が大きいと言わざるを得ない。即ち、共和党が2020年の上院選を勝つにはトランプの支持が必要であることが証明、少なくとも上院でのトランプの影響力は更に強まるであろう。

上院55議席はトランプ政権以前の議席数を上回るもので共和党にとってはトランプ様様である。55議席は今後の議会運営(特に人事)において共和党に余裕を持たせるものである。政策法案は下院との兼ね合いがあるが、保守有権者が重要視する(最高裁・地方裁)の任命・承認は上院の権限。これまではメイン州のコリンズ議員とアラスカのマーカウスキー議員が反対に回ることが多く、選挙前の51議席では否決のリスクを常に抱えてきた。55議席もあれば少なくとも人事においては今後よりスムーズに捗る。トランプ自身にとっては弾劾リスクが更に遠のいたので大きな勝利である。民主党のペロシ下院院内総務は弾劾決議にもともと消極的であるが、55議席ともなれば発議により躊躇するであろう。

トランプは「ものすごい成果だ」とツイートしたが、これはまんざら嘘ではない・・・

ポイント②: ブルーウェーブには至らなかったが、マドンナ旋風が吹いた・・・

今回、初当選の女性議員は26人と、これまでの1992年の24人の記録を更新。現段階で、下院には80人の女性議員が選出され、うち69人が民主党員。日本では1990年の社会党の土井たか子党首による「マドンナ旋風」を思い起こす。しかし、社会党がその後に転落したようにモメンタム(?)、一時的なブーム(?)を維持するのは容易ではない。26人も女性議員の躍進がありながら下院の獲得議席数が30に満たないということの裏を返せば、男性議員が惨敗したということである。これではとても2020年は戦えない、むしろ民主党の弱さを露呈してしまったのである。民主党は女性やマイノリティの躍進に止まったのであり、ブルーウェーブではなくレインボー・ウェーブと言った方が正しであろう。

先週、共和党選対本部の幹部と話したが、共和党執行部は下院を失っても30議席以下であれば勝利と考えている。現時点で、民主党が奪回する議席数は26~28に止まりそうである。勝利に違いないが、2020年に繋げるブルーウェーブとはとても言い難い。今回の結果は民主党にとって痛し痒しの複雑な状況と言える。つまり民主党の活性化は図れず、長老らと共にサンダーズ対クリントン思想の対立が残る体制が続く。その象徴がナンシー・ペロシ下院院内総務である。民主党内でも反発が少なくないペロシ体制は共和党としては戦い易い。




ポイント③: 安倍総理の手腕が益々重要に、シンゾー・ドナルド関係・・・

上記で言わんとすることはトランプ色が益々強まるということである。貿易・外交面でトランプの強硬姿勢が軟化すると思ったら大間違いである。実態はどうであれ、トランプは自身の政策・思想が信任されたと受け止めているに違いない。中国はこの中間選挙の結果に落胆するだろう。そこで、トランプが信頼する数少ない外国首脳である安倍総理の存在・役割が日本にとってより重要となる。トランプの安倍総理への信頼・信任は複数の日米高官から確認している。日本が持つ「シンゾー・ドナルド関係」のアドバンテージは中国が大金をはたいても手に入れられないほど貴重であり、今後の貿易交渉からアジアの安全保障においても役立つことは間違いない。個人的には、トランプ大統領に速やかに祝福の電話を入れ、その後チャンスを見計らって韓国との元徴用工問題の説明を推奨する。韓国はロビイストを使って今後アメリカ上院・下院の取り込みを図る可能性があり、早めにトランプの理解を得ることが後に役立つと思う。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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