米雇用統計特別レポート

掲載日:2020年06月08日

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2020年5月米雇用統計(6月5日発表)結果

前回値 予想 結果
非農業部門就業者数(万人) -2,068.7万人 -750万人 250.9万人
失業率(%) 14.7% 19.0% 13.3%
時間給賃金(前月比) 4.7% 1.0% -1.0%
時間制給賃金(前年比) 8.0% 8.5% 6.7%

米5月雇用統計の総括

雇用統計を前後してのドル円の反応

・就業者数は4月の統計開始以来最大の減少となる2,068.7万人減から250.9万人増へ。予想以上に労働市場が急回復していることを示唆

・製造業:237.3万人減⇒66.9万人増へ、非製造業:1,735.1万人減⇒242.5万人増へ、政府部門:96.3万人減⇒58.5万人減へそれぞれ改善、レジャー・娯楽産業やヘルスケア関連業種の改善が顕著 

・失業率は13.3%と市場予想(19.6%)ほど悪化せず、4月(14.7%)から改善

・パートタイム労働者や職探しをあきらめた人を含む広義の失業率も21.2%と、4月(22.8%)から改善

・低賃金労働者の労働市場への回帰により全体的な平均時給は前月から低下。時間給賃金は4月の30.04㌦から5月は29.75㌦へ低下⇒前月比-1.0%、前年比+6.7%

・トランプ政権による中小企業向けの給与保証プログラムを通じた失業給付金の拡充も支援。失業給付の対象を拡充し自営業者やフリーランサーも、さらに週あたり600㌦の加算給付
⇒米4月の個人所得は前月比+10.5%と3月(-2.2%)から改善、さらに労働市場の回復が今後の米個人消費の回復につながるか期待

米5月雇用統計は予想以上に改善、今後も労働市場の回復基調を維持するか?

今回の雇用統計、就業者数が前月から増加することを予想したエコノミストは一人もいなかっただけに、ポジティブサプライズと受け止められました。週間の新規失業保険申請件数は失業者の増加を示唆しているほか、ISM製造業、非製造業景況指数の雇用指数はいずれも悪化が続いていることを示唆する結果となっていました。ウィルス感染の影響によるデータの収集に支障が生じているところもあるほか、失業率の計算の根拠となる調査回答率は67%に留まるなど、ウィルス感染拡大前の82%と比べてもかなり低いものであり、6月の雇用統計で5月分のデータが下方修正される可能性には注意が必要です。しかし、業種別就業者数の前月からの比較を見ても明らかなように娯楽や接客業界の雇用は、全体の持ち直し分のおよそ半分を占めるなど、レストランでのテイクアウトやデリバリーなど従業員の職場復帰に向けた新たな動きも労働市場の回復に寄与しました。今後、ウィルス感染拡大の第2波が発生しない限り、夏場に向けて更なる制限措置の緩和や解除が進むことで、より多くの労働者が職場復帰を果たすと思われます。トランプ大統領は給与税減税など一段の刺激策を議会に要請していく方針を示すなど更なる対策を講じる用意があることを表明。今週のFOMCでパウエルFRB議長が今回の雇用統計を受けて、米国経済の先行きについて楽観的な見方を強めるのか、さらにウィルス感染前の生活パターンに戻るにはどの程度の期間を要するのか。さらにワクチン開発までの経済を回復基調に戻すための措置をどのように講じるのか、様々な課題を残しつつも「ひとまず安心」の状況を維持することができるか、今後発表される5月の指標が注目されます。

米非農業部門就業者数(万人)

米非農業部門就業者数(万人)

米失業率(%)

米失業率(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

雇用統計を前後してのドル円の反応

雇用統計を前後してのドル円の反応

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

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