米雇用統計特別レポート

掲載日:2020年05月11日

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2020年4月米雇用統計(5月8日発表)結果

前回値 予想 結果
非農業部門就業者数(万人) -87.0万人 -2,200万人 -2,050万人
失業率(%) 4.4% 16.0% 14.7%
時間給賃金(前月比) 0.5% 0.4% 4.7%
時間制給賃金(前年比) 3.3% 3.3% 7.9%

米4月雇用統計の総括

・就業者数は統計開始以来最大の減少となる2,050万人減、3月、4月もそれぞれ下方修正

・製造業:235.5万人減 非製造業:1,716.5万人減 政府部門 98万人減、レジャー・娯楽産業 -765.3万人、教育、ヘルスケア -254.4万人、小売関連 -210.7万人

・一時的ではない失業者は 250 万人程度、約 1,800 万人は一時的な レイオフとの見方も

・失業率は14.7%と市場予想(16.0%)ほど悪化しなかったものの、1940年代以来の低水準

・低賃金労働者の失業が増加、全体的な平均時給の上昇
時間給賃金は3月の28.67㌦から4月は30.01㌦へ上昇⇒前月比+4.7%、前年比+7.9%

・トランプ政権による中小企業向けの給与保証プログラムを通じた失業給付金の拡充も支援
失業給付の対象を拡充し自営業者やフリーランサーも、さらに週あたり600㌦の加算給付
⇒個人消費の支援につながるか米国経済の先行きを見る上で注目

・労働参加率は3月の62.7%から60.2%へ低下

トランプ政権の失業給付の拡充が米経済後退への懸念を緩和・・・?

今回の雇用統計を受けてクドロー国家経済会議(NEC)委員長からは失業者の内、4分の3は一時的な解雇であり、5月は経済活動再開の月になるだろうとして、パンデミックによる影響は一時的に留まり、今年下半期にはプラス成長になるとの楽観的な見通しを示しました。また、トランプ政権の失業給付の拡充策が景気後退への懸念を緩和させる効果があるとの期待も過度なリスク回避を後退させる一因となると思われます。

トランプ政権の失業給付拡充策

①自営業者やフラーランサーも給付対象に

②加算給付が週当たり600ドル

雇用統計から算出した2019年の週当たりの平均収入は963ドルでした。これに対し、2019年の失業保険の平均給付は290ドルでしたので、今回の加算給付(600ドル)により、失業給付額は290ドル+600ドル=890ドルとなり昨年の週当たりの平均収入963ドルには及ばないものの、ある程度の生活水準を維持することが可能になります。こうした対応策により米GDPの約7割を占める個人消費の著しい減少を防ぐことにつながると期待されます。

③失業給付を年内いっぱい延長するとの方針を打ち出しており、引き続き高水準の失業保険申請件数が続いても景気減速に歯止めが掛かると期待されています。また、先週末時点でおよそ全米の38州で自宅待機等の制限が解除されるなど、生産活動再開の兆しが確認されたことも米国の景気回復期待につながっています。先週末8日のNY株式市場ではNYダウが455.43㌦高(+1.90%)の24,331.32㌦と続伸して取引を終えたほか、ナスダックは終値ベースで2月24日以来の水準を回復し、141.66Pts高(+1.57%)の9,121.32Ptsと5日続伸して取引を終えました。米中閣僚級による電話協議での米中貿易交渉の「第1段階の合意」を履行することが確認されたことも好感され、ウィルス感染を巡る米中間の関係改善への期待もNY株式市場の上昇に寄与しました。加えて、全米での経済活動再開が拡大するなど労働市場の最悪期は脱するとの見方を背景に米経済の早期回復期待が上昇を牽引しました。ダウは先週一週間で607㌦高、ナスダックも516Pts高と堅調な値動きを続け取引を終了しました。今週発表される米国および中国それぞれの4月小売売上高や鉱工業生産で底打ちや改善が確認され先行きへの明るい兆しにつながるか注目されます。

米非農業部門就業者数(万人)

米非農業部門就業者数(万人)

米失業率(%)

米失業率(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

雇用統計を前後してのドル円の反応

雇用統計を前後してのドル円の反応

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

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