米雇用統計特別レポート

掲載日:2019年10月07日

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2019年9月米雇用統計(10月4日発表)結果

前回値 予想 結果
非農業部門就業者数(万人) 16.8万人 14.5万人 13.6万人
失業率(%) 3.7% 3.7% 3.5%
時間給賃金(前月比) 0.4% 0.3% 0.0%
時間制給賃金(前年比) 3.2% 3.2% 2.9%

米9月雇用統計の総括

① 米労働市場に対する過度な悲観が後退した一方、時間給賃金の鈍化が懸念

・就業者数は13.6万人増、8月(速報値+3.8万人)7月(+0.7万人)上方修正

・ヘルスケアが4.14万人増、輸送

・倉庫が1.57万人増、一方小売りは1.14万人減

・失業率は3.5%と1969年12月以来、50年ぶりの低水準へ改善

・労働参加率は63.2%と前月と変わらず、失業率改善により就業率の上昇を確認

・正規雇用を望む広義の失業率(U6)も2000年12月以来の6.9%へ改善

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

・時間給賃金は前月比横ばい、前年比∔2.9%と予想比下振れ、前月から鈍化

・労働時間 34.4時間と8月と変わらず、個人消費支出下支えへの期待継続

・10月30日FOMCでの追加利下げ観測期待を継続

・NY株式市場は利下げ期待継続を背景に全セクターで上昇

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

② 失業率の低下の一方、時間給賃金の鈍化、低インフレ懸念を払しょくできず

失業率は1969年12月以来50年ぶりの低水準となる3.5%へ改善したものの、時間給賃金は前月比横ばい、前年比2.9%と鈍化。経済理論に基づけば失業率の低下は物価や賃金の上昇につながるとされたものの、対前年比消費者物価指数(インフレ率)はFRBの掲げる2.0%目標を下回る状況を継続。今週10日発表の9月消費者物価指数(予想:+1.8%、8月:1.7%)。3.5%まで失業率が改善している状況は明らかに「完全雇用」との位置づけに違和感のない水準であり、経営者は人材確保に向けて賃金を上昇させることから、賃金上昇は加速するはず・・というのが一般的な経済理論に基づく考え方であるにもかかわらず9月の時間給賃金は鈍化するという逆転現象が生じました。おそらくは、より高い賃金を目指し自発的の職を離れる高所得者層と、単純労働に従事する低所得者層との格差が拡大している?という推測も成り立つのかもしれません。例えば25歳以上の高校卒業以下の労働者の失業率は5.4%から4.8%へ大幅に改善(前年同月比では5.6%から4.8%へ)、一方、高校卒以上大卒以下の失業率は7月以降3ヵ月連続で3.6%と変わらずの状況となりました。また、大卒以上の失業率も3.1%から2.9%への小幅な改善に留まったほか、学士以上の高学歴労働者の失業率は2.1%から2.0%への改善に留まりました。また、職を探していないものの働く意欲のある人、さらには経済的な理由から止む無くパートタイム職に甘んじている労働者などを含む広義の失業率(U6)も前月の7.2%から2000年12月以来の6.9%に改善するなど労働市場の堅調な状況が確認されています。米中通商問題の影響が懸念される中での労働市場の堅調継続が確認されており、今週10-11日の米中閣僚級による通商交渉に前進が確認されることになれば、一段の改善も期待されるだけに通商交渉の行方が注目されます。

雇用統計を前後してのドル円の反応

雇用統計を前後してのドル円の反応

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

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