米雇用統計特別レポート

掲載日:2018年07月09日

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2018年6月米雇用統計(7月6日発表)結果

前回値 予想 結果
非農業部門就業者数(万人) 22.3万人増⇒24.4万人増 19.5万人増 21.3万人増
失業率(%) 3.8% 3.8% 4.0%
時間給賃金(前月比) 0.3% 0.3% 0.2%
時間制給賃金(前年比) 2.7% 2.8% 2.7%

6月雇用統計のポイント

① 就業者数が予想を上回り、前月、前々月も上方修正、3ヵ月平均も21万人超と堅調

② 失業率は3ヵ月ぶりに4.0%台へ上昇、労働参加率の増加が影響。過度な懸念に至らず

③ 時間給賃金は前年比+2.7%と予想を下回り、賃金上昇によるインフレ加速は見られず

④ 25歳~54歳の労働参加率は79.3%へ上昇、今回の景気拡大局面における最高水準に

⑤ 総じてFRBの段階的な利上げを継続する内容、株式市場にとって好都合な結果に

パウエルFRB議長(6月20日、ポルトガルでの金融フォーラムにて)

持続的に力強い経済状況はインフレや金融安定への脅威となる恐れがある一方、長期的な恩恵があるのではないかと問うこともできる。労働市場の引締まりは、より多くの米国民の労働市場への復帰を促し、生産性改善およびインフレ加速を伴わない生産拡大につながる可能性もある。

6月FOMCでの経済見通しでは自然失業率の予想は4.1%~4.7%。今回雇用統計での失業率は3ヵ月ぶりに4.0%へ上昇したものの、FRB当局者全員が長期的にインフレの高進や資産バブルを招かず持続可能と考える水準を下回っており、4.0%への悪化も労働力人口の増加により説明できることから、FRBの金融政策に影響を及ぼす内容にはつながらないというのが市場の見方となりました。

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

今回の雇用統計では、既に職に就いているか、求職中の成人の割合を示す労働参加率が62.9%と前月の62.7%から0.2%増加しました。仮に労働参加率の上昇が無ければ失業率は約50年ぶりの低水準にまで達していた可能性もあったとの見方も聞かれています。労働力人口が60.1万人増加していることから、これまで就職活動を行ってこなかった人たちが再度労働市場に戻ってきていることを示しており堅調な労働市場を裏付けています。

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

25歳~54歳の労働参加率は79.3%へ上昇、今回の景気拡大局面における最高水準に達しています。2000年台半ばの景気拡大局面に付けた80.1%には若干届いていないことから、過度なインフレ加速につながるとの懸念は後退しています。今後、労働市場の逼迫がどの程度のペースで加速するのか、さらにはインフレ率の上昇につながるような持続的な賃金上昇に結びついていくのかが焦点となります。 こうした中で、トランプ政権の保護主義を掲げる通商政策が企業業績や設備投資への影響を通じて労働市場にどのような影響を及ぼすか注視していく必要がありそうです。

雇用統計を前後したドル円の動き

雇用統計を前後したドル円の動き

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

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