米雇用統計特別レポート
掲載日:2018年04月09日
2018年3月米雇用統計(4月6日発表)結果
前回値 | 予想 | 結果 | |
---|---|---|---|
非農業部門就業者数(万人) | 31.3万人増⇒32.6万人増 | 18.5万人増 | 10.3万人増 |
失業率(%) | 4.1% | 4.0% | 4.1% |
時間給賃金(前月比) | 0.2% | 0.3% | 0.3% |
時間制給賃金(前年比) | 2.6% | 2.7% | 2.7% |
3月雇用統計のポイント
① 就業者数は過去1年で2番目の低水準ながらも直近3ヵ月平均は20.1万人増と堅調
② 失業率は5ヵ月連続の4.1%、労働参加率上昇の中で堅調な結果に
③ 時間給賃金(前年比)は前月の2.6%から2.7%へ改善もインフレ加速懸念は見られず
④ 物品生産部門就業者数は前月10.6万人増から1.5万人増へ鈍化、建設業も1.5万人減
⑤ トランプ政権の鉄鋼・アルミの関税制裁措置の影響の可能性も就業者数鈍化の一因か
⑥ 雇用統計の影響以上に米中貿易問題への懸念から株安に、ドル円は106円78銭まで
米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)
米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)
パウエルFRB議長(4月6日、雇用統計後の講演にて)
・成長ペースは加速、労働市場は強い
・労働市場は強く、引き続き強いと予想
・労働市場にスラックが存続
・賃金の伸び、労働市場が過剰にひっ迫していないことを示している
・FOMCは経済見通しリスクは概ね均衡していると見ている
・中期的にインフレは2%前後で安定へ
サンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁(4月6日、雇用統計後の講演にて)
・米失業率は来年までの3.5%に低下すると予想
・今後2年間、漸進的利上げを継続できると確信している
・2018年に3回~4回の利上げ予想を支持
今回の雇用統計では悪天候や前月の大幅増の反動から就業者数が10.3万人増に留まり、過去12ヶ月で2番目の低水準となりました。しかし直近3ヵ月の就業者数の平均は20.1万人増と20.0万人を上回っているほか、失業率も昨年10月以降6ヵ月連続で4.1%の低水準を維持するなど堅調な労働市場が持続していることが確認されました。時間給賃金は前月比+0.3%と前月から持ち直したほか、前年比でも+2.7%とこちらも前月から上昇が確認されました。しかし過度なインフレ加速を想起させるほどには至っておらず、雇用統計発表直後の米長期債利回りも低下しました。
今回の就業者増の鈍化が単に悪天候や前月の大幅増の反動と片付けることができるのか、実際物品生産部門の雇用は1.5万人増と、2月の10.6万人増から大きく後退したほか、建設業の就業者数も1.5万人減少したのが主な要因との見方もあります。
建設業は大量のアルミや鉄鋼を使うというのも偶然ではなく、トランプ米大統領が3月初めに鉄鋼・アルミの対中関税について制裁措置を発表したことで米中貿易問題が雇用者数の鈍化に影響を及ぼしたとの見方もあり、こうした点には注意しながら今後の雇用統計を見ていく必要があります。
一方、パウエルFRB議長やサンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁からはいずれも労働市場の堅調に言及する発言も聞かれるなどFRBの年3回~4回の利上げペースに変化は見られず引き続き時間給賃金のほか、個人消費支出コアデフレーターなどのインフレ指標の動向が注目されます。
雇用統計を前後したドル円の動き
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