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2021年06月18日 更新

銀行による暗号資産保有を促進するか、バーゼル委員会がリスクウエート案を公表

バーゼル銀行監督委員会(以下、「バーゼル委」)は6月10日、「暗号資産エクスポージャーに係る慎重な取扱い」(原題:Prudential treatment of cryptoasset exposures)と題する文書を公表した。銀行の暗号資産保有に対し非常に厳しい規制を課したというニュアンスの報道も散見されるが、本稿ではその内容と影響について考察する。

1990年代後半から2000年代初めにかけてリスクアセット(RWA:Risk Weghited Asset)という言葉に日本の金融界のみならず経済界も翻弄された。1988年7月にバーゼル委は国際的に業務を行う銀行の自己資本比率を8%以上とすることで合意した(バーゼルⅠ)からだ。

その自己資本比率は、分子が自己資本、分母が総資産のリスクの大きさを示す数値として計算される。総資産については資産の質に応じて掛け目が定められ、。例えば、高格付けの自国通貨建て国債や現金などは0%、住宅ローンのような担保がデフォルト率が低い債権は50%といった具合にだ(その後、掛け目は細分化される)。リスクの低い資産を持てば総資産リスク値を圧縮し、自己資本比率が高まる仕組みだ。日銀のHP上で公開されている資料によれば、当初の掛け目は0%、10%、20%、50%、100%の5種類のみで100%を超えるものは無かったようだ。しかし、その後、リスク評価が高度化・細分化するに従い100%を超えるアセットクラスが誕生、金融庁の資料によればバーゼルⅢでは銀行の政策保有株式の掛け目は最終的に250%まで引き上げられることとなっている。因みに、この自己資本規制はかつてはBIS規制と呼ばれていたが、これはバーゼル委がBISの中に事務所を置いていることに起因するもので、バーゼル規制とした方が正しい。

今回のリスクウエート案では、暗号資産を①トークン化されたアセット(STOのイメージ)②ステーブルコイン③BTCなどそれ以外の3つに分け、①と②は原資産のウエートを使用可とし、③のいわゆる暗号資産は1,250%に設定した。このリスクウエートは自己資本比率を計算するためのもので、すなわち1,250%×8%=100%で、銀行がBTCなど暗号資産を保有する場合は、資産と同額の自己資本を保有する事を義務付けた格好だ。このかつてない高い掛け目の設定を受けて、非常に厳しい規制と報じる向きもあったが、BTCでさえ1-2週間で半分になってしまう(逆に2倍にもなる)ボラティリティを勘案すれば、そう違和感はないと言えよう。因みにステーブルコインと見なされるには厳しい審査があり、原資産との価格乖離が0.1%を超えることは年3回しか認められず、またアルゴリズム型のようなものは認められないなど、ハードルはかなり高い様だ(認められなければ暗号資産と同じ1,250%が適用される。なおCBDCは今回規制の対象外)。

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