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2021年06月11日 更新

エルサルバドルがビットコインを法定通貨にする影響 ~人類の偉大な一歩になりえるか~

マイアミで開催された「Bitcoin2021」へのメッセージで、エルサルバドルのブケレ大統領が「BTCを法定通貨とする法案を近く国会に提出する」と表明したことはサプライズだった。そもそも「Bitcoin2021」のスケジュールに大統領の名前は無く、Strike社のJack Mallers CEOの、アポロ11号のアームストロング船長が初めて月に降り立った時の名言"One small step for Bitcoin, One giant leap for mankind"をもじったタイトルのプレゼンテーションの中でのリモート出演だった。このMallers CEOの表現は、今回のエルサルバドルのBTC法定通貨化の意義を的確に示しており、本稿では、なぜ「この小さな一歩が人類にとって偉大な一歩となるのか」を考察したい。

日本国内では、BTCが法定通貨に採用されると「外国通貨」に該当するため「暗号資産」から外れてしまうという反応が見られた。日本は世界に先駆けて、資金決済法でBTCなどを「暗号資産(当初は仮想通貨)」と定義し法整備を進めてきたが、資金決済法では、「暗号資産」の定義から「外国通貨」は除かれることになっているからだ(第2条5項1号)。ただ、エルサルバドルが目指している制度は我々がイメージする通貨とは若干異なる様だ。法定通貨である米ドルを止めてBTCに移行する訳ではなく、両者を並行して使用する。例えば、商店にBTCでの受取を義務づけるとともに、BTCの価格変動リスクリスクを回避するために、政府がBTCをドルに交換する制度も構築する。日本の法解釈上どうなるかは置いておいて、同国が「法定通貨(Legal tender)」に加えるとしたのは、法定通貨としての米ドルは維持しつつ、補完的な支払手段としてBTCを加えるということだ。

なぜ同国はこうした決断をしたのだろうか。前述の通り同国は自国通貨を放棄し米ドルを法定通貨として使用している。これをドル化と呼び中南米ではパナマやエクアドルなど複数見られる。それ故、BTCを支払手段に加えることに抵抗感が無かったことが理由の一つに挙げられる。いわゆる通貨発行益(シニョレッジ)や通貨主権をに拘りがないため、便利なものなら採用しようとなり易い訳だ。次に、大統領も指摘していたが、同国の銀行口座を持たない人(Unbanked)の多さが挙げられる。(分母が分からないが)国民の7割が既存の金融システムの恩恵を受けられていなければ、暗号資産は金融包摂の切り札となる。弊社コラム「ビットコインは法定通貨になりうるのか?エルサルバドルで初の法案提出」でフロッグリープ現象として紹介しているが、例えば固定電話が普及していない地域でその段階を飛ばして携帯電話が普及したように、銀行やクレジットカードなどの金融システムが普及していない地域で暗号資産決済が先に普及する現象だ。

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