Column

2020年09月08日 更新

米雇用統計に違和感~なぜNFPはほぼ予想通りだったのに、失業率が8.4%に大幅低下したのか?

子供たちが地下鉄の駅まで迎えに来ます。新学期が始まってから下火になっていたのですが、最近は毎日のように駅の改札までやってきます。そこで小職が自販機でアイスクリームかミルクコーヒーを購入して、追いかけてきた家内と4人で家まで帰る訳です。我が家から駅まで歩いて5分くらいなのですが、そこを子供用のスクーターや足漕ぎバイクに乗ってやってきます。一時は地下鉄の改札にまでスクーターに乗ってきて、通勤客の間をすり抜けていたので、危ないのでやめさせました。家にいても面白くないのか、夜に外に遊びに出る口実が欲しいのか、最近は毎日のように迎えに来ます。閉口するのは、家内の携帯を使って、息子が電話をかけてくるのです。

「パパ、何時に帰ってくる?」

「あともうちょっとだから待ってて。時間が分かったらママの携帯にメールするから」

この会話を何回となく繰り返します。かけてこないようにすることも可能ですが、5歳の子にそういうのも大人気ないかと止めさせてはいなかったのですが、先週のある日、息子がやたらと電話をかけてきます。最後は数分毎にかけてきて、うるさく思った小職も電話に出なくなってしまいました。駅の改札に着くと息子、娘、家内の姿が見えません。ふと、見ると改札を出たところのベンチのようなところで、下の娘がミルクコーヒーを飲みながら、30代くらいの知らないおじさんと話をしています。話を総合すると、家内に言わず、子供たちだけで駅までやって来て、下の娘は心細くなって泣き出したところで、そのおじさんがミルクコーヒーを買ってくれたそうです。そのおじさんにはお礼とコーヒー代を渡して帰ってもらいました。いい人で助かりました。

子供がいなくなったことに気づいて追いかけてきた家内とも合流して、子供には自分たちだけで外を出回ってはいけないこと、「知らないおじさんにものを貰ってはいけない」ということを懇々と説明しました。ただ、思い起こせば、自分にも気づくチャンスはあったはずです。要は、我慢できずに子供たちだけで駅に向かってしまったけれど、小職がなかなか帰ってこなくて、更に知らないおじさんまで話しかけてきて、不安に思って何回も電話をかけて来た訳です。そんな事情は「パパ、今どこ?早く帰って来てね」だけでは分かりません。ただ、息子は家内の携帯を持って出ているので、その状況に小職が気付いたとしても、家内の携帯は子供たちが持ち出していたので、小職にできることはありませんでしたが。

こうした普段と何か違うな、と思ったときに、そこから更に深掘して考えることの重要性は、私生活においても、市場を見る上においても変わりません。普段は、30分、短くても10分に1回の息子からの電話が5分や3分おきになった時に異変を感じるべきだったのかもしれません。先週の相場でもそうした、あれ?と思うことがありました。金曜日の米雇用統計が強い内容で米長期金利上昇、ドル買いで、最近は良い経済指標は金融緩和継続が危うくなるという発想で米株が売られました。テスラ株と同様に米市場がアンワインドを引き起こした一因ですし、BTC相場もこれに巻き込まれて、最終的には一時1万ドルを割り込むことになりました。

その米雇用統計の何が違和感あったかというと、非農業部門雇用者数増減(NFP)が予想135万人とほぼ同水準の137万人だったのに対し、失業率が予想9.8%に対し8.4%と大きく好転していたのです。雇用数があまり増えていないのに失業率が低下した場合、労働参加率が下がっていることが考えられます。職探しを諦める人がいて、その結果、雇用者数は変わらず、分母である労働人口が減るので、失業率が下がる訳です。しかし、今回は失業保険上増しが7月に期限を迎えたことを反映して、参加率は61.3%から61.7%に増加しています。

このトリックは、NFPは事業所調査、すなわち各企業の給与支払いデータから雇用者を割り出すのに対し、失業率は家計調査、すなわち家計に直接調査するという違いからくる数字のズレです。今回は、NFPによる雇用者増が137万人と5月以降で最も鈍化していたのに対し、家計調査による失業者数は279万人減7月から倍増していたのです。雇用者増と失業者減、この似たことを示す2つの数字の調査方法の違いで、今回の不自然な数字が出てきたわけです。労働局の説明では一時帰休(Temporary layoff)の人が310万人職場復帰したことが寄与したとされています。また、これで一時帰休が4月の1810万人から620万人に減ってきたとしています。

この事業所調査と家計調査、通常は前者の方がサンプル数も多く正確で、後者である失業率は遅行指数だとされたりもします。それ故、それまでNFPに対し小さ目に出ていた失業者減が遅れて出てきただけと見ることもできるかもしれません。一方で、家計調査によれば、3月と4月に増えた失業者1730万人の内、既に950万人が職場復帰をしており、8月のペースで減り続けたらあと3か月でコロナ前に戻ってしまいかねません。そうなればホワイトハウスが追加経済対策を打つ必要もFRBが今の量的緩和政策を続ける意味もなくなり、ポール・チューダーらがインフレヘッジとしてBTCを購入する必要もなくなりかねません。実際のところ、旅行業界や航空業界などコロナによる経済への影響はまだこれからも続くと思っていて、そこまで心配はしていませんが、この数字には正しく恐れる必要があると思います。

子育てをしていると、夜遅くに子供を駅に来させていいものか、家に帰ってから子供と遊んだら、翌日の幼稚園に響くのではないか、そもそも何時に子供は寝かせるべきか、色々と分からないことばかりです。こうしたことも家計を調査して教えてもらえると助かります。因みに今日は家内からのメールで、子供が風邪気味で早く寝かしつけたいので、早く帰ってくるなと言われてしまいました。

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