FX取引の歩み | SBI FXトレード 

会社概要

FX取引の歩み
~FX取引の誕生から現状、そして将来展望について~

FX取引環境の整備

1998年の日本版金融ビッグバンにより、日本の個人が外国為替市場への直接参加が可能となり、外国為替証拠金(FX)取引がスタートしました。このFX取引は、貿易立国のためにもともと為替レートへの関心が強かった日本国民にすぐに浸透、「ミセスワタナベ」がその代名詞ともなっている日本のFX個人投資家の動向は、世界のプロ投資家の間でも注目を集めています。
また、このFX取引は既に世界で広く認知されている金融取引となりましたが、日本の個人投資家の総取引高は、世界中のFX取引総取引高の50%を占めるまでになっており、日本が主導権を握ることができる金融サービスにまで成長しています。
2013年7月11日付けの日本経済新聞朝刊で記事として取り上げられていましたが、日本の個人投資家による5月のFX取引のドル円取引規模は1日平均14兆円にものぼります。これは東京の銀行間取引の10倍規模。大きく膨らんだ取引は、マーケットを動かすまでに拡大しました。
日本でFX取引がここまでの地位を築き上げることが出来たのは、先ほど指摘しましたように、日本経済の仕組み上、為替市場がもともと国民にとって既に馴染み深いマーケットであったというベースもありますが、日本のFX業者や市場環境整備に尽力した監督官庁、協会等関係者の並々ならぬ努力の結果であるとも言えるでしょう。

1998年にスタートしたFX取引は、黎明期では相対取引という取引形態のために、取引ルールや仕組みが取引業者によってまちまちであり、取引の公正性は取引業者に依存しがちになり、個人投資家自身がそのリスクを判断しなければならない状況でした。こうした中、詐欺まがいの行為も横行し、多くの悪徳業者が様々なトラブルを起こし、社会問題となる時期もありました。
こうした状況を打開するために、2005年、改正金融先物取引法が施行され、FX業者は登録が必要となり、管理体制が整い始まることとなりました。
続いて2007年には、投資者保護の徹底を目的とした金融商品取引法が施行され、これまでの「金融先物取引法」は同法に統合されることとなったのです。

その後もFX取引の市場環境整備のためのルール作りは進み、
2010年2月には「信託保全の義務化」「ロスカット制度」
2010年8月にはレバレッジ規制第1弾(50倍)
2011年8月にはレバレッジ規制第2段(25倍)
2012年1月には税制のイコールフッティング
と健全な市場形成のための各種ルールが作られました。現在もさらなる環境の健全化のための取り組みは続いています。

「顧客との利益相反関係」の構造是正への取り組み

冒頭で説明させていただきましたように、1998年にスタートして以降のFX取引には、国内外を含む様々な業種からの参入がありました。しかし、ピーク時には200社以上もあったFX業者の多くが整理淘汰され、現在では70数社に絞られてきました。今後もより整理淘汰が進むことが予想されます。
FX取引が社会問題化し始めた頃から指摘されているように、金融業界以外の異業種からの参入も数多くあり、「顧客との利益相反関係」を前提にしたビジネスモデルで業を成す会社も数多く存在します。
「顧客との利益相反関係」を前提にしたビジネスモデルの典型的な例が、最近新たな規制の対象となった「バイナリー・オプション」ではないでしょうか。
このバイナリー・オプションは、数分後(多くが10分)の価格が設定値より単に上になるか下になるかを当てるだけという丁半博打のような単純な取引ルールと、100円単位の小口から参加が可能という理由で人気を博した商品サービスです。
「オプション」というジャンルの取引形態とされてはいるものの、インターバンク市場では、本スキームの取引を実行することが出来るオプション市場は存在しません。要するに、業者が本取引により生ずるリスクをカバー出来る市場は存在しないということになります(オプション取引によるリスクをスポット市場で管理するというスキームもありますが、現在のバイナリー・オプション取引サービスのリスク管理手法としては現実的ではありません)。このため、本取引に参加した投資家の利益は業者の損失、逆に投資家の損失は業者の利益、という「顧客との利益相反関係」のスキームが浮かび上がってきます。

通常のFX取引でも、1998年のスタート時から同様の問題点が指摘されており、今後もこうした悪行を正すためのルール設定が必要とされています。現在進められている、「スリッページ」問題に関する規制こそが、「顧客との利益相反関係」を前提に、顧客の損失を業者の利益とするスキームの是正のためのルール作りの一つとなっています。

ここで、海外での事例における、「顧客との利益相反関係」を前提としたサービスの不正スキームをいくつか上げてみましょう。

【1.収益性の高い顧客口座をスリッページ誘発サーバへと移行させる】
高い利益を上げている顧客の取引口座を特定し、故意にスリッページ詐欺を目的としてスリッページを誘発するための遅延を発生させることが可能な特殊な機能を搭載したサーバへ移動させ、顧客の収益化の機会を奪う。

【2.「偽エラー」メッセージによる約定拒否】
顧客の利益ポジションの決済を防ぐため、わざわざ構築した特殊なソフトウェアからの操作により偽のエラーメッセージを発信、約定を妨げる。

【3.ストップ狩り】
顧客のストップオーダーを執行させるために配信価格を操作し、マーケットに存在しない価格を配信。

【4.顧客への予告無しの証拠金率の変更】
顧客への事前通知をすることなく週末クローズ前に証拠金率を高く変更、証拠金不足によるロスカットを誘発。

【5.業者有利なスリッページ設定】
顧客が有利となるスリッページが発生した場合、顧客有利となる価格を採用しない。

【6.利益時の決済注文に対してスリッページ詐欺を目的とした遅延・約定拒否を意図的に発生させる】
顧客による利益時の決済注文に対しスリッページ詐欺を目的としてスリッページを誘発するための遅延を行い、遅延している間での最も顧客不利となる価格を採用する不正行為を意図的に発生させ、顧客の収益化の機会を奪う。

以上は、金融取引としては到底ありえないスキームであり、日本のFX業者がこうした悪行を行うことのないよう、願ってやみません。

【日本におけるFX取引に関する規制の変遷】

日本のFX取引に関する規制の変遷
主な法令等の改正 規制の内容
1998年4月 改正外為法施行 為銀主義撤廃。日本の企業や個人(居住者)の外国為替取引が自由化。
外国為替証拠金取引誕生。
2000年2月 組織犯罪処罰法施行 金融機関等に疑わしい取引の届出を義務付け。
2001年4月 消費者契約法施行 不適切な勧誘によって締結された契約を消費者(顧客)が取り消しできる。
2003年1月 本人確認法施行 金融機関に顧客の本人確認を義務付け。
2004年4月 改正金融商品販売法施行 FX取引が金融先物取引法の規制対象となり、FX会社にリスク等の説明を義務付け。
2005年7月 改正金融先物取引法施行 FX取引が金融先物取引法の規制対象に。FX会社は登録制になり、行為規制の厳格化や自己資本規制等が導入。
2007年4月 犯罪収益移転防止法一部施行 「本人確認法」と「組織犯罪処罰法」が一本化
2007年9月 金融商品取引法施行 金融先物取引法など4つの法律を廃止し、証券取引法から改称した金融商品取引法に統合。投資家保護ルールの徹底と利便性の向上や金融市場の透明化、国際化を促す目的で制定。
2010年2月 金商業等府令改正施行 ・顧客資産の信託保全を義務付け
・ロスカットルールの整備、遵守の義務付け
2010年8月 金商業等府令改正施行 レバレッジ規制・第1弾(レバレッジ50倍)
2011年8月 金商業等府令改正施行 レバレッジ規制・第2弾(レバレッジ25倍)
2012年1月 税制改正 申告分離課税へ一本化(一律20%)。店頭取引と取引所取引のFX税制のイコールフィッティング実現。
2013年8月 金商業等府令改正施行 公益および投資家保護の観点から個人向け店頭バイナリ―オプションの適切な取り引きの期限、期間の設定等。
金融庁監督指針の一部改正施行 顧客が不利となるスリッページの禁止、スリッページの取扱いに関する顧客説明等。

相対取引から相対市場作りへ

世界のFX証拠金取引の50%の取引量を生み出す日本の証拠金取引市場では、スプレッドの狭さばかりが注目されますが、ここまで成長した背景には、その健全な市場整備のためのルール作りに多大な努力が払われていたことを忘れてはなりません。

これまでは、個人投資家、FX業者、監督官庁、協会と各関係者の努力で相対取引のルール整備が進められてきました。
しかし、これから先の将来は、今のままでの相対取引では限界があります。「顧客との利益相反関係」を前提にしたビジネススキームでは、カジノとほとんど変わりありません。このFX取引を真に金融取引の一部となるように市場整備するためには、今後、最大の市場関係者であるインターバンクとのさらなる協力関係が必要不可欠であると考えます。そして、今後日本のFX取引は、相対取引から相対市場の整備という新しい局面へと移行し、成長著しいアジア新興国での重要インフラと成るべく、FX取引の輸出が大切な使命となることでしょう。今後、こうした事業展開が加速していくことは、新興国へ進出する日本企業の為替決済業務の効率化にもつながり、大きな国益をもたらすものと考えております。